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蕗の薹(ふきのとう) :俳句



革靴の降りゆく沢や蕗の薹  矢野リンド
             (かわぐつのおりゆくさわや ふきのとう)
 

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◇ 季語: 蕗の薹(ふきのとう) 【春】 ・植物

◇ 俳誌「100年俳句計画」2月号 「100年の旗手」矢野リンド十句より。







*  *  *  *  *  *  *  *


男のややくたびれた黒い革靴が、石ころや草木の点在する沢を降りてゆく。

「あとで裏の沢のほうへ蕗の薹を採りにゆこうと思って…」
妻は今朝、そう言っていた。
男はそれを気にもとめなかった。
土曜で役所は半ドンということもあり、じきに自宅に戻れるし。
しかし、戻ってみると妻の姿はどこにもなかった。
蕗の薹・・・
ハッと男は気づいた。都会育ちの妻にとって、あの沢は危険すぎるのではないか。
男の転勤に伴い、夫婦はローカルの地に越してきてばかりなのだ。
妻には村の土地勘さえない。ましてや、あの沢の辺りは。
男は脱いだばかりの靴に、すばやく足を入れた。

それにしてもなんて滑りやすいんだ。
つるつるした靴底が、湿った斜面を降下してゆく。
なにか光るものを目の端に留め、視線を落とすと淡い緑色の蕗の薹がひとつ。
男が屈むと、さやさやと囁くような水音が聞こえた。
その音に誘われ男の視線が小川へと注がれた。

あ!! (そこに男が見たものは…)




*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *




◇ 画像はバルセロナの「迷路公園」にて。

◇ 掌編小説は私の妄想です。コメント欄は閉じております。

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by mariko789 | 2018-03-20 14:19 | olympus OM-D E-M5 | Trackback
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