寒紅(かんべに)③ :俳句
2012年 01月 26日
されど寒紅 少年の秘す地雷 久遠 (旧:流星)
(されどかんべに しょうねんのひすじらい)
季語: 寒紅(かんべに)、丑紅(うしべに) 【冬】 生活
紅花から作られる紅は、寒中のものがもっとも良質だという。
特に丑の日に売り出される「丑紅」が珍重された。
俳句で詠まれるのはふつう口紅であることが多い。(角川 季寄せより)
裏口に母が居るよな丑の紅 よし
寒紅や姉の化粧を盗み見む 麗門
寒紅の色映したる君の頬 詩楽麿
幾久し煩う床に寒紅の
かほり漂い頬も色めく 詩楽麿
雪見酒この世のことはみな儚(はかな) 流星
母親の鏡台の引き出しの中に、少年は″それ″を見つけた。
リップスティック。。
おそるおそる蓋をとってみる。にょきっと飛び出てきたのは深紅の口紅。
「・・・なんだよ、こんな真っ赤な口紅。こんなのつけるのかよ・・・」
その赤色は、少年の母を″女″という別世界に連れ去ってしまいそうだ。
蓋を閉めたリップスティックを少年は握り締める。
こんなの、捨ててやる!
けれどそんな勇気はありそうもない。
しばし少年は鏡台の前で立ち尽くす。
思春期の少年の、大人の女性に対する懼れ・嫌悪感・憧憬が入り混じった複雑な想いを詠んでみたいと思いました。
『寒紅』は好きな季語で過去にも二度アップしています。
2009-12-21 寒紅でにくらしき背に烙印す 流星
2011-01-18 夫ならぬ胸に灯すは寒紅の 流星
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