always over the moon

中村苑子氏の俳句

貌が棲む芒の中の捨て鏡

おんおんと氷河を辷る乳母車

春の日やあの世この世と馬車を駆り

昨日から木となり春の丘に立つ

黄泉に来てまだ髪梳くは寂しけれ         (水妖詞館)

桃のなか別の昔が夕焼けて             (花狩)

父母遥か我もはるかや春の海

帰らざればわが空席に散るさくら         (吟遊)

死が見ゆるとや満開の花仰ぐ

少年美し雪夜の火事に昂りて          (花隠れ)

「音もなく白く重く冷たく雪降る闇」、苑子が83歳

いつよりか遠見の父が立つ水際

うしろ手に閉めし障子の内と外

この冥き双ひ鳥かな山河かな

さしぐむや水かげろふに茜さし

すれ違ふ春の峠の樽と樽

わが春も春の木馬も傷みたり

わが朝の夢におくれて来し鳥か

わが墓を止り木とせよ春の鳥

茜さしてわが死はじまる雲や秋

綾とりや小鳥殺しの春の雪

一度死ぬふたたび桔梗となるために

永き日や霞に鳥を盗まれて

遠しとは常世か黄泉か冬霞

かの桃の遊びをせむと言ふ

黄泉(よみ)に来てまだ髪梳くは寂しけれ

蝦夷の裔(すゑ)にて手枕に魚となりたる

我れ在りて薄き夕日となりにけり

古き日にとり巻かれゐて墓となる

鯉死んで暮春の男乾きけり

行く水の此処に始まる昔かな

昨日から木となり春の丘に立つ

死なば死螢生きてゐしかば火の螢

死にそびれ糸遊はいと遊ぶかな

死に遅れたる父は父どち魚遊び

死後の春先づ長箸がゆき交ひて

春の日やあの世この世と馬車を駆り

春山の色に消えたる箒売り

消えやすき少年少女影踏み合ふ
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by mariko789 | 2008-10-09 23:20 | no-photo