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夜霜(よしも) :俳句

縁切りの札びら仕舞ふ真夜の霜  中原久遠 
  (えんきりの さつびらしまう まよのしも)

季語: 霜、霜の花、霜の声、青女、大霜、深霜、強霜、朝霜、夜霜、霜晴、霜雫、霜解 【冬】 天文

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※ まつやま俳句ポスト 初回投句 『兼題』 霜    選者 夏井いつき :並選




【掌編小説 真夜の霜】

私が今でもときどき妙な関西弁を喋るのは、大西さんの影響と思う。
京都の人だった。
ぱっと見は派手だったけれど、よく気の付く優しいところがある人だった。
それでも関西人特有の押しの強さがあり、彼に押し切られた形で婚約した。
婚約してすぐ、ちょうどお正月だったので、長姉の家に二人で赴いたのだ。
長姉夫婦の大西さんに対する見立ては、「素敵な人じゃないの。」「良いご縁のようだね」。

けれどそのとき同席していた次姉は、翌日私に電話をしてきた。
「あんなきちんとして落ち着き払った独身なんていないわよ。彼には絶対に奥さんがいる。興信所で調べなさい」

調べるまでもなかった。
数日後、大西の妻と名乗る女性から電話がかかってきたのだ。
「大西と別れてください。この泥棒猫! 鬼!」

私にしてみれば青天の霹靂だった。
むろん婚約は解消した。
最後の日、彼は頭を下げ白い封筒を差し出した。
「きみ、留学したいと言ってたやんか。これは少ないけどその飛行機代にでもしてくれ。きみはまだ若い。なんぼでもええ人生が拓ける。すまん・・・ほんまに君と一緒になりたかったんや。」

それからの彼は韓国人クラブに通いつめ、酒と女に溺れ、あげくの果てに肝臓を壊し、
入院を待機する自宅療養中に亡くなったという。

もしもあのとき彼が本当に独身で、結婚していたとしたら・・・私の人生はどうなったかしら。。
真冬の夜、冴子はふと大西の優しかった眼差しを思い出したりするのだ。
思い出になってしまった人はみな美しい。
                        【完】
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by mariko789 | 2014-02-07 00:30 | Nikon coolpix P510 | Trackback
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