always over the moon

良夜(りょうや):俳句


         自販機の釣銭多き良夜かな    流星
              (じはんきの つりせんおおき りょうやかな)

 




     

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季語: 良夜(りょうや) 【秋】 天文


           

           思ひ出は山近くして露の宿       よし

           古障子 洗はれ角が取れましてん    流星

           秋の七草 摘み尽くされて野は虚ろ     流星

           ハズレ馬券を 窓から捨てりゃ
                  なぜに馬追い 虫が鳴く    与太郎





◎つまらない俳句なのですが、掌編小説を思いついてしまったので、アップします。





【ツキ】

(まったくなぁ・・・)
松ちゃんは溜息をつきつき夜空を仰いだ。
(仲秋の名月だっちゅうのに、無月ときたもんだ。月もなけりゃツキもねえ)
こう見えても松ちゃんは俳句などヒネる風流な御仁なのだ。
五十の坂を下っても「松ちゃん」とちゃん付けで呼ばれるほど、可愛げのある男でもある。
銭湯の帰り道であった。
東京の郊外のそのまた端っこにあるこの辺りは、家々の灯が消えかかる頃にはめっぽう暗くなる。
ところどころににょっきり立っている外灯がかえって薄気味悪いほどである。

(あれ?なんだ、あれは・・・)
ふと前方を見ると、空地の前にぼうっと白っぽい灯りが見える。
(幽霊にしちゃ、いやに角ばってるじゃないか)
近寄ってみると、飲物の自動販売機であった。
「仕方ねえなぁ、こんな寂れた道に自販機なんか置いちゃって。誰が買うんだよ。」
言いつつ、松ちゃんはポケットをまさぐる。
職なし金なし女房なしの松ちゃんは情に厚い。
「レモンソーダが110円か。ハンパだなぁ。」
松ちゃんは100円硬貨を二枚、自販機の口に入れた。

「ツキが出た出たぁ~ツキが出たぁ~」
不意にのんきな歌声が聞こえ、はっと振り向くと、見知らぬおじさんが左側の角を曲がってゆくところ。
見事に禿げ上がった頭が、あたかも月のように光っている。
おじさんもどうやら銭湯の帰りらしく、小さな洗面器を小脇に抱えていた。

実はちょうどその時、雲間から仲秋の名月が顔を出したのだが、松ちゃんは気づかなかった。
それというのも、彼は驚きのあまり腰を抜かしそうになっていたからだ。
ちゃりんちゃりんちゃりんちゃりん
自販機の釣銭口から、出てくるわ出てくるわ、大判小判ならぬ百円玉と十円玉が。

                      掌編小説 【ツキ】 by 流星 おわり!



◎画像はカンボジアにて、Nikon Coolpix P510 で撮影した、月。
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by mariko789 | 2012-10-03 10:27 | Nikon coolpix P510 | Trackback
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