花菜 :俳句
2012年 04月 26日
ゆく父の舟は花菜の岸を離る 流星
(ゆくちちの ふねははななの きしをかる)
離(か)る=離れる(古語)
季語: 花菜、菜の花、菜種の花 【春】 植物
菜の花の岸を離るる父の舟 流星
餓鬼となるわが末おもふ友霞 日野草城(toboさまよりご紹介)
想い出は今は昔の花の雨 よし
ジーンズの膝すりきれて夏隣 麗門
ひれふして祈れば兆す穀雨かな 流星
一言の メモに残りし 胸の内
静心なく 桜散るらむ 詩楽麿
黄泉の花 永久に咲きたれ 川沿いに 詩楽麿
菜の花の上に地蔵の頭かな 与太郎
あの世って果たしてあるのでしょうか。
ちょうど父が亡くなる一年前のことでした。
父は北海道をドライブ中に大きな交通事故に巻き込まれ、あわや一命を落とすところだったのです。
あとから聞いたのですが、救急病院のベッドで意識不明の状態のときに、父はあの世の淵まで行ったのだという。
あれは菜の花だったのかなぁ。黄色い花が一面に咲いていてね、それはもういい心地なんだよ。
その向こうには川が見えてね。川向こうはもっといいところのように見える。
行こうと思ったんだ。川向こうへ。
と、そのとき〇子の声がしたんだ。「お父さん、お父さん」って呼ぶ声が。
それでハッとこちら側に戻ってきた・・・
どこにでもあるような「あの世から帰還」のお話と瓜二つ。
けれどそれから心不全で亡くなるまでの一年間、父は人が違ってしまった。
それまでは、わがままで自己中心だったのに、それ以後は家族思いの好々爺になった。
まるで長い間、家族を省みなかった罪を償うように・・・。
国際結婚をしている私のことも随分心配してくれた。
おりしも亡くなった日に、郵便局から関西土産の小さな壷を送ってくれていた。
それを開けたのは、お葬式もすんで私がロンドンの家に帰ってからだった。
壷の入った箱にメモが忍ばせてあった。
つらかったらいつでも帰ってこいよ。
父が亡くなったのは十一月だったけれど・・・
春のように菜の花が一面に咲く岸から旅立っていったのだろうか。。
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